秣(まぐさ)の繰り言

もう70歳を過ぎた男の繰り言です。

俺69歳、妻64歳。夫婦で初めての韓国旅行(7)

「韓国旅行3日目夜、雨のタッカンマリ横丁」

水原華城」八達門近くのレストランを出て、水原駅行きのバス停を探しに歩き始める。直ぐ近くにバス停はあるのだが、水原駅行きのバス停は無かった。ただ、バス路線番号3000番のバス停があった。ここで、またまた妻からの提案。この3000番のバスは江南駅の近くに行くはず。このバスに乗って戻ろうかと。う~ん、まぁいっか~。   

韓国の「現在と未来の発展が見える街」と言われる江南地域(誰が言ったか忘れたが)も、今回の旅行では、とても見て回れないと思っていたので、少しでも街並みを見れたらラッキー!

違う路線のバスが何台か止まっては去り、やっと3000番のバスが来た。乗り込む時、確認のため運転手に尋ねた。  「カンナム、このバス、OK?」   「カンナム?」不思議そうな運転手。 「カンナムへ行きたいんだけど」   やっと此方の意図が分かったようで、 「カンナム!」と言って反対側の歩道を指差す。

「えっ?違うの?·····あっち?」    運転手はただ、指を反対側に向けて差し「カンナム!」と言うだけ。    「違うって!向こうだって!」と妻に向かって話し、慌ててバスを降りる。

反対側の歩道へ渡り、3000番のバス停を探す。無い。妻がスマホを出して探し始める。と、ため息まじりに、    「もっと向こうだって!停留所!」  妻の指差した方向は、約1時間くらい前に出て来た華城行宮のある方向。歩いても10分はかからない距離だが、戻ってもし、そこも違っていたら。  本当にこっち方向のバスでいいの?  ソウルって、どっちの方向だった?  うーん、何かよく分からなくなってきた。妻の病気「方向音痴」が俺に移ったようだ。 止めよ!水原駅に戻ろう!

うん、水原駅なら来た時と反対向きのバスに乗ればいい。そう、最初に探した側で水原駅行きのバスを探そう。

韓国水原市の人口は120万だと言う。大都市じゃん! 少なくとも、田舎者の俺にとっては。駅前も近代的なビルが立ち並ぶし、駅構内も綺麗だし。

来た時と同じ地下鉄1号線に乗る。  でも来た時にも思ったが、地下鉄と言いながら地上走っているし(まぁ、ありますけどね、日本にも。東西線とか)。車窓から見える景色は、一時的にビルがひしめく大都会の風景から、落ち着いた田舎の景色に変わる。

しばらく、田舎の風景が続いていたが、やがて徐々に高く近代的なビルが多く見えるようになってきた。そう、ソウルの街なかに入ってきたのだ。遠くには、高層ビルが幾つも、所狭しと並んでいる。うん、韓国第一の大都会ソウルの街並み。うん、地下鉄なのに地上を走っている地下鉄1号線 (それにしても、ソウルから水原まで約1時間。その間地上かぁ~)!

地下に潜ったのはソウル駅の少し前から。そのソウル駅が近づいてきた時、例によって流れる車内アナウンス。

「えっ?、初めて聞いた!」そう、いつもの通り流れる韓国語と英語のアナウンス。そして、そのあと流れる「日本語」のアナウンス。

「へー!さすが、ソウル駅!日本語が流れるんだ~!」と感激。     妻は「別に!」って顔をしている。 俺達はソウル駅では降りないで、直接「東大門」駅まで行き、ちょっと早いが、夕食を食べに行くこととする。ということでソウル駅はスルー。うむーソウル駅、いまだ未体験!

東大門駅で降りて、9番口から地上に出た頃は、すでに日は落ちて暗く、しかも雨も降っていたためか、多くのネオンが滲んで見えた。時刻としては、夕方5時を少し過ぎたくらいなんだろうけど、雨のせいか駅を出た人達は足早に去っていく。俺達も急いで雨宿りできる所を探し、あるビルの1階ピロティに走り込む。

妻がスマホを取り出し、俺達のいる場所を探す。目の前の道路からは明るい街灯が、建ち並ぶビル群からは部屋の明かりが、そして道行く車からはヘッドライトが、俺達の周りを煌々と照らし出す。でも、全ての明かりが滲んで少々暗い。ガイドブックによれば、東大門がライトアップされて、幻想的な風景をかもし出す。と書いてあるが、どっちを向いても見えない。

本当に俺達、この時スマホアプリの使い方が分からなかったんだよなー! 後で娘から、地図アプリで行きたい場所を押して印を付け、自分たちの現在地を表示させれば、どう行くか分かるでしょうが!とバカにされた。      そのやり方が分からなかったから、迷ったんだろうがー!ふん!

もう少し先だろうと思い、歩いていくと小さな雑貨屋が見えた。そこで傘を買う。白地に3㎝と1㎝くらいの黒い玉が1面散らばっている模様の小さな傘。そこのお婆ちゃんに「タッカンマリ横丁ってどこ?」と聞いてみた。

「タッカンマリ?」          「そうそう、タッカンマリ横丁。」  そのお婆ちゃんは、もっと先の方を指差した。「え?先?もっと?」

タッカンマリ横丁は東大門から西に走る大通りとほぼ平行に走っている狭い小路。その間は、これまた数本の狭い小路で繋がっている。タッカンマリ横丁には、幾つもの食堂、カフェ、フードコートみたいな食べ物屋が多く軒をつらね、グルメ達を唸らせていると聞いた。その横丁を繋ぐ小路にも、有名な店が幾つもあるとも。

お婆ちゃんに言われた通り先に進む。が、無い!だいぶ先に行ったが、それらしい小路が見あたらない。暗くて店らしきものも無いし、行き止まりらしき小路もあった。うん、元に戻ろう!

最初に戻って、また歩き始める。少し行くと、ちょっと広い小路がある。屋台が幾つかあった小路だが、雨がやまない、客も少ないなどで、先程より数が少ない。早めに閉めた店が多かったのだろうか? ここが多分、屋台通り。 スマホなどでは、多くの屋台とそこに集まる客で賑やかだと書いてあった。でも、この日は、寂しい。

「狭いな~」屋台通りから入った、なお狭い小路。水溜りも、あちらこちらにあり、歩きにくい。雨も小降りになってきたが、まだ降り続いている。

ここがタッカンマリ横丁。先程は、屋台通りを通り過ぎたから迷った。通り過ぎたのは、傘を買いたかったから。この辺、雑貨屋なんてありそうもないし。早速、お目当ての店を探す。

無い!この小路に面しているはず。でも、見当たらない!遂に小路を突き抜ける。もう1度戻りながら探す。   「あれ?ここ、地図アプリで出ていた店。ということは、もう少し先?」  「ここは、ガイドブックで美味しいと書いてあった店。この近く?」 などと探しながら歩くが見当たらない。

結局、ガイドブックなどで美味しいと評判の店は何軒か見つけた。ただ、客がいない!店内が暗い!      逆に客はある程度入っているが、名の分からない店があった。もっとも俺達はハングル語が分からないから、もしかしたら有名な店なのかもしれない。

ここで、妻が問う究極の選択!    「ガイドブックの評判はいいが客の入っていない店か、ガイドブックには乗っていないが客が結構入っている店。 どっちがいい?」         当然、客が結構入っている店!

店内は結構、混んでいた。入ると直ぐ店員が来て、日本人と分かると「3階へ」と指示してくれた。「3階?」と俺が聞くと、その店員は頷いた。俺達の後からも客が何人も入ってくる。慌てて奥の階段に向かう。1階は、ほぼ満席。「外国人は3階なのかな?」と呟けば、「単に3階しか空いてないんじゃあない」と妻。ところが2階に上がったら、ちょうど空いたばかりの席があり、そこに案内された。      「やっぱり席がなかっただけよ。」 「そうかぁ? 1階、少し席あったような気がするけど。」        何はともあれ座ろう。注文しよう。食べよう。うん、早く。

タッカンマリを注文し、改めて周囲を見渡す。この2階も混んでいる。広いし、席もいっぱいあるのに満席。賑やかな話し声があちこちから、時々大きな笑い声も聞こえる。         しばらくして店員(若い女の子)が鍋を持ってきて、コンロにかけてくれた。         「タッカンマリ?」と聞くと      「タッカンマリ。」と答えてくれた。  タッカンマリは、初めて。参鶏湯みたいなものかな?

食器を揃え、トッポギも持って来てくれて、用意が出来た。定員がこちらを向いて「マッコリは?」聞いてくる。  「それはあと」と妻。            「ご飯を」と妻が注文する。        「ご飯?」ちょっと不思議そうな顔をした店員だが、直ぐ頷いてカウンターの方へ戻っていった。                             「日本語、分かるんだなー」       「分かるでしょう!若いし、こういう仕事してんのだから。アルバイトかもしれないけど。」

鍋が煮えてくると、また店員がやって来て、鍋にトッポギを入れてくれる。  もう頃合いと思ったのか、妻が鶏肉を鍋から掬い、俺の皿に入れてくれた。

「えっ?·····けっこう、美味しい!」 うん、結構どころか、かなり·····旨い!  妻も「本当に美味しい!」と。     俺は、グルメでもないし、ましてやレポーターでもない。だから上手い言い方は出来ないが、兎に角、旨かった!

途中で頼んだ焼酎も美味しかったし、料理にも合っていたと思う。料金も想定内だったし、身も心も満足して店の外に出た。外、雨は止んでいたが、道にはまだ水溜りが幾つか残っていた。

まぁ、いいさ!雨は止んだし、料理は旨かった!うん、最高!         「正解だったなー!いやーあの店!」  「うん、いい選択だった!」

終わり良ければ全て良し!        今日は、いろいろあったけど、何はともあれ、何とか成った❗ホテルに戻って、焼酎飲んで寝よ❗うん、満足。  妻が、呆れた顔して俺を見ていた。